社会人向け MOOCs体験談

DockerとKubernetes実践入門講座受講記:コンテナオーケストレーションの基礎からクラウドネイティブ開発への応用

Tags: Docker, Kubernetes, コンテナ, DevOps, クラウドネイティブ

私は長らくWebアプリケーション開発に携わってきましたが、システムの複雑化、マイクロサービス化の潮流、そしてクラウドネイティブへの移行が進む中で、コンテナ技術とそのオーケストレーションが不可欠なスキルであると痛感していました。特に、開発環境と本番環境の差異に起因する問題、デプロイの複雑性、そしてシステムの可用性やスケーラビリティの確保に課題意識を抱えていた状況です。

受講の動機:現代の開発・運用課題を解決するために

これまでの開発では、仮想マシンやオンプレミス環境での運用が主であり、アプリケーションのデプロイや環境構築には常に手間と時間がかかっていました。例えば、新しい開発メンバーがプロジェクトに参加する際、開発環境のセットアップだけで数日を要することもしばしばありました。また、本番環境へのデプロイも手動のプロセスが多く、ヒューマンエラーによるトラブルのリスクも無視できませんでした。

このような課題を解決し、より効率的で堅牢なシステム開発・運用体制を構築するためには、Dockerによるコンテナ化とKubernetesによるコンテナオーケストレーションの知識が必須であると考えました。自己学習も試みましたが、概念の多さや実践的なノウハウの習得に限界を感じ、体系的に学べるオンライン講座を探していました。いくつかの候補の中から、網羅性と実践的な内容に惹かれ、この「DockerとKubernetes実践入門講座」の受講を決めました。

講座概要:基礎から応用まで網羅する実践的なカリキュラム

この講座は、Dockerの基本的な概念からDockerfileの書き方、Docker Composeによる複数コンテナの管理、そしてKubernetesのアーキテクチャ、主要なリソース(Pod、Deployment、Service、Ingressなど)、さらにはHelmによるパッケージ管理やCI/CDパイプラインへの組み込みまでをカバーする内容でした。前提知識としては、Linuxの基本的なコマンド操作、ネットワークの基礎、そして何らかのプログラミング言語での開発経験が推奨されており、私自身のバックグラウンドとは合致していました。

講座は主にビデオ講義とそれに付随するハンズオン演習で構成されており、手を動かしながら理解を深める設計になっていました。特に、各セクションで紹介される技術が、実際の開発・運用でどのように活用されるのか、具体的なシナリオを交えて解説されていた点が印象的です。

具体的な受講体験:試行錯誤と理解の深化

私は平日の夜と週末の時間を活用し、週に平均して8時間から10時間程度の学習時間を確保しました。講座全体の期間としては、約3ヶ月を要しました。

学習方法と工夫

ビデオ講義で理論を学んだ後、すぐにハンズオン演習に取り組みました。提供される演習環境だけでなく、自身のローカル環境(Docker Desktop)や、別途契約していたAWSのEC2インスタンス上にMinikubeを構築して試すなど、積極的に手を動かすことを意識しました。特にKubernetesでは、YAMLファイルによるリソース定義が中心となるため、実際に手を動かしてエラーを経験し、デバッグする過程が非常に重要でした。

一つの工夫として、講座内で紹介されたアプリケーションだけでなく、自身が業務で関わっている小規模なアプリケーションを題材に、Dockerfileを作成したり、Docker Composeで環境を構築したりする演習を自主的に行いました。これにより、学んだ知識をより実用的な文脈で理解することができました。

大変だった点

最も大変だった点は、やはりKubernetesの概念の多さと、それらを組み合わせたYAML定義の複雑さでした。Pod、Deployment、Service、ReplicaSet、Namespaceなど、一つ一つの概念は理解できても、それらがどのように連携し、どのような目的で使われるのかを全体像として把握するまでには時間がかかりました。

例えば、Serviceのタイプ(ClusterIP、NodePort、LoadBalancer)の違いや、Ingressのルーティング設定など、ネットワーク周りの設定には特に苦労しました。

# Deploymentの例
apiVersion: apps/v1
kind: Deployment
metadata:
  name: my-app-deployment
spec:
  replicas: 3
  selector:
    matchLabels:
      app: my-app
  template:
    metadata:
      labels:
        app: my-app
    spec:
      containers:
      - name: my-app-container
        image: my-registry/my-app:1.0.0
        ports:
        - containerPort: 8080

このようなYAMLファイルを多数記述し、デプロイ後の動作を確認し、エラーが発生すればkubectl describekubectl logsコマンドを駆使して原因を特定する、という作業の繰り返しでした。

面白かった点

一方で、学習が進むにつれてコンテナ技術の持つ可能性を実感し、大きな面白さを感じました。特に、Dockerのイメージを一度作成すれば、どの環境でも同じように動作するポータビリティの高さは、これまでの環境構築の苦労を考えると感動的でした。

Kubernetesでは、Deploymentのリビジョン管理やローリングアップデート、自動スケーリングといった機能が、YAMLファイルの記述一つで実現できる点に感銘を受けました。システムの安定稼働と運用負荷軽減に大きく貢献するこれらの機能は、これからの開発・運用において不可欠であると確信しました。

講座の良い点・残念だった点

良い点

残念だった点

受講によって得られた知識・スキルとキャリアへの影響

この講座を受講したことで、私は以下の知識とスキルを習得することができました。

これらの知識とスキルは、私のキャリアに大きな影響を与えています。受講後すぐに、社内の新規マイクロサービスプロジェクトにおいて、DockerとKubernetesを用いたインフラ設計と構築のリーダーとしてアサインされました。開発環境のコンテナ化を推進し、開発者のオンボーディング時間を大幅に短縮できただけでなく、本番環境へのデプロイもCI/CDツールと連携させ、自動化と安定化を実現することができました。

仕事や実生活での具体的な活用例

  1. 開発環境の標準化と効率化: 以前は各開発者の環境差異によるバグが発生していましたが、Docker Composeを用いてローカル開発環境をコンテナ化することで、開発者間の環境統一を実現しました。docker-compose upコマンド一つでアプリケーションと依存サービス(データベース、キャッシュなど)を起動できるようになり、新規メンバーのセットアップ時間も劇的に短縮されました。
  2. 本番環境のKubernetes移行プロジェクト: 既存のモノリシックなシステムをマイクロサービス化し、Kubernetes上にデプロイするプロジェクトに貢献しました。DeploymentやServiceのYAML定義を担当し、Ingressコントローラの設定を通じて外部からのアクセス経路を確立するなど、講座で学んだ知識を実践的に活用しました。
  3. CI/CDパイプラインの改善: GitHub ActionsとKubernetesを連携させ、コードのプッシュからコンテナイメージのビルド、Kubernetesクラスターへのデプロイまでを自動化するパイプラインを構築しました。これにより、デプロイ頻度が向上し、リリースのリードタイムが短縮されました。

この講座をおすすめできる人・できない人

おすすめできる人

おすすめできない人

総合的な評価とまとめ

「DockerとKubernetes実践入門講座」は、現代のITインフラを支える基盤技術であるコンテナとオーケストレーションを、体系的かつ実践的に学ぶための非常に優れた講座でした。単にツールの使い方を学ぶだけでなく、その背景にある設計思想や、実際の開発・運用におけるメリット・デメリットまで深く掘り下げて学習できた点は、大きな収穫でした。

この講座を受講したことで、私のスキルセットは大きく拡張され、キャリアの選択肢も広がりました。特に、クラウドネイティブな技術を自信を持って扱えるようになったことは、今後のエンジニア人生において強力な武器となると確信しています。コンテナ技術の習得を考えている社会人エンジニアの方々には、自信を持ってこの講座をお勧めいたします。